ご縁の輪|株式会社相和 代表取締役 兼 第一伊藤建設株式会社 常務取締役|伊藤泰史(2020.10.23)

イトーグループの代表である伊藤健次を叔父に持ち、グループ企業である株式会社相和の代表取締役を務める伊藤泰史。兄の伊藤卓見が代表取締役の第一伊藤建設株式会社では、常務取締役も兼任している。大学卒業後にはマンションの分譲販売を行う会社へ就職し、営業について勉強しようと考えていた伊藤。将来的には家業である不動産業に携わるだろうという思いからで、すでに内定ももらっていた。ところがある日、第一伊藤建設前社長の父親から「戻ってこい」と言われ、内定を辞退し株式会社相和へ新卒で入社することになったのだ。

商売の基本を学んだ修行期間


株式会社相和は、当時第一伊藤ビルに入っていたコンビニエンスストアや飲食店の店舗運営を行っていた。そのコンビニエンスストアの深夜当番の社員が辞めてしまったため、伊藤が代わりを務めることになったのだ。入社から3年は、深夜当番として勤務をしていた。その後は、将来代表取締役に就任することを見据えて、当時ビルに入っていた2つの居酒屋、喫茶レストラン、カプセルホテルと、合計5店舗の管理業務に移行していった。管理といっても、それぞれの店舗に入り、接客や調理も担当する。伊藤は当時を「ビル内のお店を知るための修行の期間でした」と振り返る。特にコンビニエンスストアでは、商売の基本について学ぶことができた。数円、数銭単位の利益を考え、計算する日々。第一伊藤建設の総務部長として、千万単位の書類のやり取りをするようになった現在でも、このときに学んだ初心は忘れていないという。


「逃げ出したかった」大失敗


順調に業務をこなしていた伊藤だが、26歳の頃に、忘れることのできない大失敗をおかしてしまう。ビルの2階にあった飲食店を閉店し、店の中を解体することになったときのことだ。解体の仕方も手順も分からず、また、誰に聞いていいのかも分からない状態。それでも何とか業者を手配し、スケルトン工事が始まった初日、厨房をコンプレッサーで砕き始めたところ、水道管が破裂して勢いよく水が噴き出した。水道・ガス・電気のインフラ関係を断つ、ということを忘れていたのだ。水は2階から1階にまわり、すべてが水浸しに。水道管だけでなくガス管も破裂したため、引火の恐怖にも怯えたという。最悪の事態は免れたものの、輸入掃除機を扱う店舗を浸水させ、壊れた数十万円の掃除機を3台買い取ることになった。「当時は、もう本当に逃げ出したかった。ただ、お店をつくるときや解体するときには、しっかり気配りをして、安全第一でやらないといけないということを、痛いほど学びました」。今でも忘れられないこの日は、伊藤の2年目の結婚記念日でもあったという。


若くして代表になった葛藤を超えて


大失敗を乗り越え、27歳で相和の代表取締役に就任。当時を振り返り「年齢の若さから、それは、なめられましたよ」と笑う。居酒屋チェーン店の本部で行われた“ 店長・オーナー研修” に参加した際には、本部の全員が、伊藤よりも10歳年上だった当時の店長をオーナーだと勘違いしたこともあった。自分自身も代表取締役を務めることに自信がなく、卑屈になっていたという。そんな伊藤は、ひたすら自店での修行を重ねた。幼い頃に包丁で指を切ったトラウマから、調理が怖かった時期もある。それを払拭するべく、居酒屋の仕込み前にはひたすらキャベツの千切りを練習した。調理も接客も経営も、すべての面で積極的に取り組んだ。経験を積み、従業員とも打ち解けていくうちに、自分に自信が持てるようになったのだ。


この先の未来を見据えて

伊藤は、若いアルバイトたちと仕事ができることを、何よりも嬉しく思うという。「普段生活をしていたらなかなか関わることのできない年齢の子たちと、様々な話ができる。やっぱりこれは、何ものにも代えがたいことですね」。今後の目標について聞くと「今の若いアルバイトたちが育ったら、小さくてもいいからお店を任せたい。最終的には独立してもらえたら嬉しい」と言葉を続けた。幾度となく壁を乗り越えてきた伊藤は、力強く未来を見据えている。これからも会社と若者の未来のために、走り続けていくことだろう。